アイドル『NEWS』の物語性

アイドルファンは、そのアイドルを応援することで、アイドルの『物語』に参加して、『物語』を消費している。

そこには、応援したくなる物語が必要だ。


AKB48の指原莉乃は『HKTのおでかけ』で総選挙を振り返った際に、谷の躍進について『可哀想の申し子』と評していた。総選挙で票を集める為には、応援したくなる何かが必要だ、と話していた。

『不本意な移籍をした。でも新しいグループで頑張る』等、の背景や本人の言葉を聞いて、ファンは投票する。

その応援したくなる物語をファンは応援する。


ジャニーズは少し違うかもしれないが、様相は似ている。

ジャニーズジュニアを応援するのは、デビューという明確な目標に向かって努力する少年たちを応援している。『てっぺんをとるぞ』というデビュー組の言葉に、ファンはその景色を見せてあげたい、と願う。

つまりファンの力でその夢を叶えてあげたい、と願う。

アイドルの夢を叶えてあげたいと思うこと以外に、ついていきたいとも思う。

アイドルの性別の違いによる生じてくる物語の性質の違いも興味深いがここではおいておくこととする。


さて、NEWSの話だ。

夜会に小山と加藤が出演した際に、『〇〇くんと愉快な仲間たち』との『愉快な仲間たち』が残った、と言われたと話していた。

かつて4人になる以前のNEWSは、『山Pがいるグループ』から抜け出すことができなかった。

ただ、NEWSを表すラベルが皆無だったかというとそんなことはなくて、『知的なグループ』という売り出しだったと記憶している。

山下智久は明治大学、小山慶一郎も明示大学。手越も早稲田だったし、加藤シゲアキは青学。知性派グループとして、売っていた。

小山慶一郎が『NEWS EVERY.』のメインキャスターとなったのは、4人以後の話だし、

加藤シゲアキが小説を出して、文化人枠でコメントをするようになったのも4人以後の話だ。

つまり、知性派アイドルを謳っていたものの、それが彼らの物語としては不十分だった気がしている。

(唯一、手越がイッテQのレギュラーに選ばれた功績が大きいかもしれないが。)

歌もうまいメンバーが多い(元メンバーにも多く存在していた)が、

山下智久がエースだったため、それはあまり売り出されていなかった気がしている。


4人になったNEWSのファンを『パーナさん』と呼ぶように、4人体制のNEWSの代表曲は間違いなく『チャンカパーナ』だろう。

そのカップリング曲である『フルスイング』もたびたび歌われ、24時間テレビでは増田が泣いた。4人体制初のコンサートでは、『フルスイング』を歌って号泣して、観客が号泣する。『フルスイング』こそが4人になったNEWSの物語を象徴する曲なのかもしれない。

その背景には、『エースだったメンバーの脱退、それを乗り越えようとするアイドル』の物語がある。あるいは、もっと歴史を遡るのなれば、不祥事が続いたグループ、脱退が続いたグループが、メンバーが減っても、それでも夢を追いかけようとする物語がある。

困難に立ち向かう4人というイメージは良くも悪くもその当時のNEWSの物語だった。

『メンバーの人数が過半数切りました』と、自虐ネタを言って笑ったり、4人になったとき『9人のメンバーが4人になったグループ』とバラエティ番組でたびたび言及されている。

NEWSを語る上で外すことのできないことになっている。

『山下智久』というラベルが剥がれた、その当時一般的知名度が薄かった4人が売れるために、『9人が4人になったグループ』というネガティブなイメージを語り、そして、それを乗り越えようとする4人という物語を作った。

『苦境に立たされ、困難を乗り越えようとする。上を目指す。』というのはアイドルの物語として、完璧だった。

彼らが東京ドームでコンサートをできるまでに這い上がることができたのは、個人個人のスキルアップやコンサートや歌への魅力も大きいかもしれないが、

こうした物語に多くのファンが共感したからではないだろうか。


そして、2017年。

『U R not alone』が、彼らを象徴する歌として加わった。この歌とともに、東京ドームで手越が号泣するシーンがいくつかの芸能ニュースで放映されることとなった。スキャンダルがあった手越と、それを乗り越えようとするグループとして、例の件は『物語』として昇華された。

かつて9人だったグループが、不祥事やエースの脱退で4人になったその物語を消費することで、NEWSは大きくなってきた。

一方で、今年はメンバーのスキャンダルという危機を乗り越えよう、と歌う。随分と強いグループになったと思う。


では、この先は何があるのだろうか、と思う。


さっしーがかつてはスキャンダルから這い上がるという物語で成功し、そして今はバラエティで活躍する爆弾娘となったように、もう一段階売れるためには、その『物語』を捨てなければならない。

そして、メンバーはすでに自分たちの新たなラベルを手に入れはじめている。

加藤シゲアキは小説家で、また『切れている』キャラクターを見せつつある。

手越祐也は金髪のうざキャラで、自らをプロデュースしているように見える。

小山慶一郎はアイドルなのにアナウンサーであり、

増田貴久は歌がうまいが、キャラクターに迷っていると自ら語る。

意識的か、無意識か、自らにラベルを貼っていくのがうまいのが彼らなのかもしれない。


かつての同僚である山下智久を見ていると、何も語らない彼の姿を見ていると、その違いに目がいく。

それは、スターとアイドルの違いなのかもしれない。スターは語る必要がなくて、しかし語らないことがアイドルとしての弱みなのかもしれない。


普通な男の子たちがアイドルになっていく姿こそが、アイドルの面白さだ。これから彼らがどんな物語を作り続けていくのか。


その先を待っている。

考える猫

アイドル好きで、活字中毒な猫(25)が、主に哲学的・社会科学的にどうでもいいことを考える。

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